大空保育園

幼稚園・保育所
所在地 :千葉県袖ケ浦市
主要用途:保育所
竣工年月:2015年3月
敷地面積:4,846.31㎡
建築面積:1,396.01㎡
延べ面積:1,234.71㎡
規模構造:木造2階
構造設計:株式会社エヌ・シー・エヌ
設備設計:株式会社環境設備計画
施  工:東海建設株式会社
受  賞:第9回キッズデザイン賞 受賞
掲  載:建築士ちば 2016 VOL.51 平成28年10月号
写  真:千葉正人

 

国道と住宅街に挟まれた土地に建つ保育園の計画である。

地域の待機児童対策の一環として計画され、市の所有地を有効活用すべく、民間事業者へ保育園建設の募集を行い、今回の事業主が選定された。計画敷地は交通量の多い国道と低層住宅地との間に位置しており、国道からの車の騒音、園からの子どもの声、楽器演奏等の騒音、風によって巻き上がる砂埃、園舎が建つことによる日照の問題、送迎等による交通量の増加など、近隣住宅地への配慮を必要とする敷地環境にあった。敷地条件の問題から地域への説明会を重ね、園の運営や園舎の形態について、地域と理解を深めながら設計を進めた。周辺環境への問題を解決しながらも保育環境の場としての質を損なわない空間とし、地域と共存することを見据えた計画が求められた。

配置計画では園舎をコの字型することで、国道からの騒音や砂埃の問題を解決しつつ、園庭を一望できるため、子どもが園庭にいても職員がどの室内からでも見渡せる安全性を確保している。平面計画では、午睡や室内遊びが多く静かな空間となる未満児(0~2歳)の室を近隣側に、外遊びが主体で動きの多い空間となる以上児(3~5歳)の室を大きい園庭側に配置することで、静と動の空間の使い分けを行っている。それらをつなぐ廊下がうまく騒音に対する緩衝材の役割を担っている。また保育室、廊下ともにどこからでも外へ出られるため、回遊性を持った平面構成となっており、避難上も有効な計画としている。

 

近隣側と園庭側の環境に合わせた立面とするため、それぞれの窓面積に差をつけた。近隣側は室内の騒音等が漏れないようできるだけ小さい窓とし、採光・換気・排煙等の最低限必要な窓面積を確保している。対照的に園庭側は必要以上に窓面積を多く確保し、職員が見渡せることでの安全性や照明による消費電力の削減等を考慮している。立面を二層に分けて考え、上層部は立面の一体化を図るため窓を分散させ、全体のバランスを保っている。下層部は掃出し窓やトイレの採光のための窓など機能性や行為で決まる窓配置とした。

断面形状はシンプルな片流れとなっており、大きい園庭側の軒を高く、近隣側の軒を低く設定することで、騒音と日照の問題に対応しつつ、保育室が広がりのある空間となるよう計画している。夏場はできるだけ空調機に頼らないよう通風・換気を確保し、空気の流れをつくることで自然の風を取り入れる計画とし、大きい園庭と一体となったバルコニーは、庇の役割も果たし、日射による熱負荷の低減を図っている。自然環境に合わせた空間とすることで、省エネルギー化を図り、環境負荷の小さい計画にもなっている。

ここで過ごす子どもたちがのびのびと成長してくれることを願っていると共に、この保育園の設計を通じて、地域の中での保育園の在り方や子どもを地域で育てることの意味を改めて考え直すきっかけとなった。