請西の住宅

住宅
所在地 :千葉県木更津市
工事種別:新築
主要用途:一戸建ての住宅
竣工年月:2020年11月
敷地面積:353.40㎡
建築面積:124.21㎡
延べ面積:114.69㎡
規模構造:木造平屋
施  工:有限会社小山工務店
写  真:新澤一平

 

斜面に張り出したデッキテラスのある住宅。

計画地はおよそ30年ほど前に造成された住宅地の一角にあり、北側に眺望が得られる斜面を抱えた立地である。敷地面積の約半分を斜面や擁壁が占めており、建主の要望を満たすと平坦な部分いっぱいにボリュームを配置することになった。必然的に庭を確保することができないため、斜面に対してデッキテラスを張り出し、庭の機能を置き換える計画とした。

建物のボリュームは、斜面のある北側から南側に向かって勾配が高くなるような片流れの屋根形状とし、平屋とすることで斜面と一体となるようなイメージを持たせた。周りの建物からすると少しこじんまりとしたボリューム感になるが、斜面や地面に近い建ち方とすることで斜面との一体感を印象付けようとした。外観は耐久性やメンテナンス性を考慮し、金属サイディングをメインとしているが、周辺の環境や斜面との一体感、内部にいても外部を楽しむ生活ができることを踏まえ、ディープグリーンの色合いや木目調サイディングなど自然の中にある色を選択することで風景に馴染む外観をつくっている。

構造としては、一般的な木造在来軸組工法だが、斜面からの吹上げに配慮し、軒が張り出した部分の垂木は梁せいを大きくし、屋根を構成する二次部材の強化を図っている。デッキテラスは万が一の斜面の崩壊を考慮し、建物本体とは構造的に縁が切れており、鉄骨部材で軸組を構成することで安全、かつ、腐食等の心配がいらないため、メンテナンス上でも有効なものとなっている。

プランとしては、家族が集まるリビングダイニングを敷地の中心に据え、各個室は成人している家族同士が一定の距離を保てるよう配慮した平面計画としている。南側の玄関を入ると北側のデッキテラスまでの動線は一直線で結ばれており、テラスへは段差無く床がフラットにつながっている。軒天とリビングダイニングの天井を杉板で統一し、間口2間の大きな開口部は全開口することで、外部と内部が連続し一体的に感じられるような空間となっている。そこは外部を取り込んだリビングダイニングでもあり、リビングダイニングが拡張したテラスでもある。アウトドアを好む建主は、気候の良い季節にはそこでバーベキューをしたり、ハンモックで昼寝をしたり、人を招いて談笑したり、外部を感じながら生活を楽しむことができるスペースとなっている。

敷地に対して斜面や擁壁が占める割合が大きく、一見余裕のない土地に見えるが、その土地の状況と丁寧に向き合うことで豊かな環境を獲得できると感じた。建主が惚れ込んだこの土地からの眺望を日々楽しみながら生活できるのは、建主自身がこの土地と向き合ったおかげなのかもしれない。