弘教寺もんしんと会館

その他
所在地 :千葉県市原市
主要用途:寺院
竣工年月:2016年8月
敷地面積:717.08㎡
建築面積:419.65㎡
延べ面積:392.51㎡
規模構造:木造平屋
構造設計:株式会社エヌ・シー・エヌ
設備設計:株式会社環境設備計画
名号本尊:仏師坂上俊陽
施  工:株式会社ケンソー
掲  載:株式会社エヌ・シー・エヌ会報誌「Network SE 152号」
写  真:千葉正人

 

浄土真宗本願寺派弘教寺の門信徒のための会館である。

会館と言っても葬儀や通夜は行わず、法要や門信徒の活動のみを行うことから門信徒のための寺院として計画された。一般的に寺院は閉じた印象が強い用途だが、この建物では通りに対して開放的な外観とすることで内部での活動と街との距離を近づけることを目指し、街に開かれたカフェのような雰囲気を醸し出している。

当初から「スタバ」のような会館にしたいという住職の要望を元に、門信徒にとってコミュニティ形成の場となるような”サードプレイス”の概念を念頭に計画を進めた。外壁はレンガ調のタイルによって寺院の持つ格式や伝統の比喩表現とし、内部は天井や腰壁に木材を多く採用することで親しみをもって活動できるよう設えている。その木質空間を引き立たせるため、光をやわらかく拡散してくれる仕上げや素材の質感が温かみのある印象をつくっている。また門信徒には高齢者が多いことから健康へ配慮した室内環境を提案し、安心して日々の活動ができる場となっている。

敷地は2面道路に接道しており、プライベートな空間や機能的な諸室は隣地側にL字で配置することで、人の集まる外陣が道路に対してオープンな外観となり、内部での活動や情報が街へ発信でき、宗教施設でありながら気軽に立ち寄れるような雰囲気をつくっている。エントランスも自動ドアで、床の段差をつくらず、敷居の低い空間を実現している。

エントランスから外陣、内陣は一直線に配置し、そこを軸にシンメトリーに空間を構成しているが、外陣は間口が広く、奥行きが浅いこと、内陣がアルコーブ的に配置され、圧倒的に外陣が大きいことなどから、シンメトリーを意識させない空間となっている。奥行きが浅いことで内陣との距離が近くなり、どこにいてもご本尊が見えるような構成となっている。宗教的な催しだけでなく、門信徒によるイベントの企画などでも利用される予定であることから、外陣といってもいろいろな場がつくり出せるような計画としており、街に開かれた広場的な空間として地域との結びつきを生み出せないかと考えた。

木造でありながら、外陣の開放的な空間を実現するため、構造はSE構法を採用している。間口20,930㎜、奥行き12,285㎜の空間に対し、内陣からの軸線上に170㎜角の柱が2本配置され、Y方向に梁成560㎜の大梁が架かり、X方向に梁成300㎜の登り梁を乗せている。梁成が大きいので、天井懐が大きくなる分、立面側で天井を織り上げ、軒先を逆勾配にしてシャープな外観をつくっている。この地域は防火指定もなく、建物自体にも耐火・準耐火の要求がないため、170㎜の柱は燃え代ではなく、軸力と座屈防止からくる構造耐力上必要な寸法となっている。

いずれ、このオープンな寺院が地域に開かれた広場のように利用され、かつて寺院の境内で行われ広がっていった市(いち)のような賑わいが街へ浸み出していくことを期待している。