グループホーム桜咲 ~saku saku~

福祉施設
所在地 :千葉県市原市
工事種別:新築
主要用途:寄宿舎(認知症高齢者グループホーム)
竣工年月:2021年3月
敷地面積:1,023.37㎡
建築面積:435.63㎡
延べ面積:416.17㎡
規模構造:木造平屋
構造設計:株式会社小野設計社
設備設計:株式会社環境設備計画
施  工:株式会社プラスワンホーム
写  真:千葉正人

 

敷地内にあった桜の木を残した認知症グループホームの計画である。

認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)というのは、地域密着型サービスと言われ、利用者と地域を切り離さないことが基本理念にある。また、敷地内には元々この地域の人たちに親しまれていた桜の木があり、それを残した計画とすることが設計の起点となった。

計画地は周辺に戸建て住宅や昔からの農地がある地域に位置し、その中でこの建物は比較的大きなボリュームを持つことになる。そのボリューム感を軽減するように分節されたような外観をつくり、かつ、桜の木を残す配置とすることで道路から大きくセットバックしたような建ち方とした。また、グループホームというとどうしても施設的なデザインになってしまうので、建物全般において「施設感」の無い「住宅」としてのデザインを意識した。

外観は、一般住宅でも馴染みのある窯業系サイディングを採用し、建物形状に合わせて色や柄を切り替える住宅的なデザインによって一つの建物を戸建て住宅が並んでいるような印象をつくるよう心掛け、周辺環境にも馴染むようにした。内観もビニルクロスや長尺塩ビシートなど一般住宅でも採用されることが多い仕上げをメインとし、住宅としての居心地の良さを重視している。

平面計画では介護度でユニットを分けて考えた。道路側のユニットでは比較的介護度の低い入居者を想定し、リビングダイニングから廊下をぐるりと回遊できる平面とした。敷地奥側のユニットでは中心に大きなリビングダイニングを配置することで、各部屋を一体的に見守りができる平面としている。個室が並ぶグループホームでは均一的な平面となりがちだが、介護度やスタッフ目線となることで微細な違いが平面計画に大きく影響することになった。また、地域に親しまれてきた桜に面して「まちの縁側」と称した大きなテラスを設け、利用者と地域との関わりが持てる場をつくるようにした。テラスの外壁や軒天には木目柄を採用し、桜と同様に親しみがもてるようなデザインとし、地域とのつながりが一層強くなることを期待した。

工事期間中、現場付近を散歩していた近所の高齢者が桜の木を残したことに感激しており、「毎年この桜を見るのが楽しみなんだよな」と言っていたことが印象に残っている。それだけでも桜を残したことに十分価値があると感じたが、その方たちがこの建物に遊びに来て、「まちの縁側」で利用者と一緒にお花見をしたり、お茶を飲んでおしゃべりをする姿を簡単に想像することができて嬉しかった。